0.1 Racingの頭脳を担う第3のメンバーであり、実体を持たない「AI監督」。 限られた燃料でいかに速く、いかに遠くまで走るかが問われる「マツ耐(マツダファン・エンデュランス)」などの耐久レースにおいて、レースマネジメントの全権を握る。物理的なファクトリーを持たない「バーチャルガレージ」のチームにとって、クラウド上に存在するAIを作戦参謀として起用するのは必然の進化だった。
事前準備での暗躍と「作戦参謀」としての役割
公式戦のレギュレーション上、レース本番でのテレメトリーシステムの使用やリアルタイムでの外部通信は厳しく制限されている。そのため、AI監督の真骨頂は「レース当日までの徹底した事前準備と課題のあぶり出し」にある。
練習走行時の車載映像やシミュレータートレーニング(シムトレ)の結果、さらにはドライバーの過去の経歴やレース戦績に至るまで、あらゆる情報をインプット。これらの多角的なデータをもとに、「レース当日までにどのようなドライビングの課題を克服すべきか」を浮き彫りにし、具体的な改善メニューを提示してドライバーを導く。

さらに、RYUZABUROが自作したテレメトリーシステムが吸い上げるOBD2やCAN通信の膨大な車両データも解析。コンマ1秒のタイム差や燃料消費の相関関係を事前に丸裸にし、精緻なレースシミュレーションモデルを構築しておく。

そして迎えるレース当日は、この事前テストで導き出した膨大な最適解をもとに「作戦参謀」として活躍。状況に応じた目標ラップタイムの微調整や、最適なピットインのタイミングなど、人間の勘や焦りによる計算ミスを排除した冷徹かつ正確な戦略を弾き出し、スマートなレース運びを実現している。
「0.1」の哲学を体現する秘密兵器
ピットクルーの人手すら足りないプライベーターにとって、専属のコーチやピットウォールで戦略を練るスタッフを雇う余裕はない。しかし、最新のデジタル技術とAIを活用することで、多額のコストをかけずにファクトリーチーム顔負けの高度なレース戦略を展開することができる。 「限られた資金で最大の効果を出し、本気の勝負をする」という0.1 Racingの哲学を、まさにデジタルの世界で体現している頼もしい頭脳である。